はじめに
甲状腺の病気は、主治医からきちんとした説明が受けられない、説明を読んでも情報が多すぎて分かりにくい、ということをよく聞きます。
一方、口から口へ、あるいはメディアを通して伝わる情報は、不備があったり誤りがあったり、また誇張されていたりしています。明るい情報は伝わりにくく、暗い情報には説得力があり、素早く伝わって深く浸透してなかなか訂正されません。
こうしたことをなんとかしようという甲状腺専門医が、グループを組んで作成したのがこのホームページです。正しく知れば、無用な心配をしなくなることでしょう。
甲状腺とその病気について
甲状腺は、「のどぼとけ」の少し下にある15~20グラムほどの小さくて平たい臓器です。正常な甲状腺は軟らかいので触ってみてもわかりません。横断面で位置関係をみると、頸椎(頸部の骨)の前に食道があり、その前が気管で、甲状腺は気管の前面に張り付いています。ものを飲み込むと気管と一緒に上下します。
甲状腺では、食物に含まれるヨウ素(ヨード)を主原料にして甲状腺ホルモンを作っています。
甲状腺疾患の説明
バセドウ病Graves' disease
バセドウ病になると、甲状腺を過剰に刺激するTSHレセプター抗体=(TRAb)という物質がからだのどこかで作られて、甲状腺ホルモンが必要以上に産生されて、血液中の濃度が高くなります。
甲状腺の働きが高まっているので、甲状腺機能亢進症ともいいます。バゼドウというドイツ人の名前が付いているので、日本では特別な病気と思い込まれがちですが、そういうことはありません。
バセドウ病眼症(甲状腺眼症)Thyroid ophthalmopathy
バセドウ病というとよく‵目が飛び出る病気′と思われていますが、目に明らかな異常が起こるのは一部の方です。詳しい検査をすると、ごく軽いものも含めるとバセドウ病の7割ほどに眼に異常があるとされていますが、症状がでるのは少ないのです。ただ目は顔の印象を形成する重要な要素で、それまでと少しでも違うと気になりますし、大きく変わると気持ちが落ち込むだけでなく仕事や周囲との関係にも影響を与えかねません。
橋本病Hashimoto's thyroiditis
“橋本病”はその名前を一度は聞いたことがある人が多くても、どのような病気かよく知られておらず、難病のようなイメージを持たれていたりしますが、けっして大病や難病ではありません。1912年に橋本病の元になる病態を、日本人である橋本策(はかる)先生がみつけたため、後になって海外の研究者が“橋本病”と名付けました。ほかの甲状腺疾患と同じように女性に多く、女性の20人に一人ぐらいは橋本病の抗体を持っています。
甲状腺機能低下症Hypothyroidism
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンが不足している状態をいいます。甲状腺機能低下症になる原因には橋本病のほかにもいくつかあります。
甲状腺の結節
(しこり)Thyroid Mass
甲状腺の結節(しこり)について、種類や検査、治療などを紹介させていただきます。
甲状腺の炎症Inflammation of the thyroid gland
甲状腺の炎症には、甲状腺に対する慢性的な免疫反応によって起こる痛みのない慢性甲状腺炎(橋本病)のほかにも、痛みや発熱を伴って急激に起こる亜急性甲状腺炎、急性甲状腺炎があります。
甲状腺の病気と
妊娠・出産Thyroid Disease and Pregnancy / Childbirth
お子さんを持つ場合の気がかりは、以下のことではないでしょうか?
- 病気が妊娠に影響しないのだろうか
- 妊娠や出産で病気に影響がないだろうか
- 病気が子どもに影響しないだろうか
- 妊娠中の薬が子どもに影響しないだろうか
甲状腺機能に異常がなく、甲状腺ホルモンに過不足がない疾患は、妊娠・出産にあたって懸念するものはありません。
また治療が必要なものであっても適切な薬があります。丁度よい服用量の加減が重要ですが、これに知識と経験のある医師が関われば心配はいりません。ただし治療開始が遅れ過ぎると問題が起こる場合があります。
妊娠中に治療が必要なのは、甲状腺ホルモンが過剰に産生されるバセドウ病と、逆に産生が不足する甲状腺機能低下症です。
甲状腺とヨウ素Thyroid And Iodine
ヨウ素はヨードともいい、元素のひとつです。甲状腺はからだの中でヨウ素を必要としている唯一の臓器で、これを原料として甲状腺ホルモンを作っています。
誤って伝えられている情報と正しい情報
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橋本病と甲状腺機能低下症は同じ病気?
甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンが不足している状態をいいます。
橋本病の一部の人がその状態になっています。