血液検査
正常値は、健康と思われる人を集めて検査したときに、その95%が当てはまる範囲です。
正常値は施設によって異なるものもあります。
甲状腺機能検査
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検査項目 (正式名) |
説明 | 正常値 (単位) |
---|---|---|
FT4 (遊離サイロキシン) |
体の代謝を活発にし、子どもの発育にも必要です。ヨウ素が4ついたサイロキシン(T4)と、3つついたトリヨードサイロニン(T3)があります。甲状腺から主にT4が分泌され、肝臓などでT4からT3に変換されてT3が作用を発揮します。血液中ではT4もT3も大部分が蛋白と結合していますが、ホルモンとして働くのは蛋白と結合していない遊離サイロキシン(FT4)・遊離トリヨードサイロニン(FT3)なので、これらの濃度を調べます。 | 2.2-4.2pg/ml |
FT3 (遊離トリヨードサイロニン) |
0.7-1.5ng/dl | |
TSH (甲状腺刺激ホルモン) |
甲状腺を刺激してホルモンを産生させているのがTSHです。これは下垂体から分泌されていて、FT4、FT3が血液中に多すぎると分泌が減り、足りないと増加します。FT4、FT3の濃度が変化してからTSH濃度が変わるのに少し時間がかかります。FT3,FT4が正常のようでも、その人個人にとって過不足があるとTSHは増減します。(下表 FT3,FT4,とTSH の関係を参照)。 | 0.5-4.3μU/ml |
FT3,FT4とTSHの関係
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甲状腺ホルモン状態 | FT3 (遊離トリヨードサイロニン) |
FT4 (遊離サイロキシン) |
TSH (甲状腺刺激ホルモン) |
---|---|---|---|
過剰:甲状腺機能亢進症 変化中 または |
↑ | ↑ | ↓ |
↑ | → | ↓ | |
→ | → | ↓ | |
不足:甲状腺機能低下症 変化中 または |
↓ | ↓ | ↑ |
→ | ↓ | ↑ | |
→ | → | ↑ | |
正常状態 | → | → | → |
甲状腺抗体検査
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検査項目 (正式名) |
説明 | 正常値 (単位) |
---|---|---|
TRAb (抗TSH受容体抗体) |
バセドウ病患者さんの血液中にある抗体で、甲状腺にくっついて甲状腺を刺激し、FT4、FT3の過剰を引き起こします。バセドウ病の診断と経過をみるのに用います。この抗体自体は濃度が高くてもからだの症状とは直接関連しません。TRAbの測定法にはいくつかあり、基準値が異なります。ほとんどのTRAbは甲状腺を刺激しますが、中には抑制するものもあります。TRAbが実際に甲状腺を刺激する作用があるかを調べるのが、TSAbです。まれに甲状腺機能低下症でもTRAbがみられることがありますが、これは甲状腺の働きを抑える作用のものです。 | 検査法により <10 % <15 % <2.0 IU/l |
TSAb (甲状腺刺激抗体) |
<120 % | |
TgAb※ (抗サイログロブリン抗体) |
甲状腺で作られるサイログロブリンという蛋白質に対する抗体です。橋本病(慢性甲状腺炎)の診断に使われますが、バセドウ病でもよくみられます。 | <28 IU/ml |
TGPA※ (サイロイドテスト) |
<100 x | |
TPOAb※ (抗甲状腺ペルオキシダーゼ 抗体) |
甲状腺ホルモンを作るときに必要な甲状腺ペルオキシダーゼという酵素に対する抗体です。マイクロゾームテストも主に同じものを測定しています。橋本病(慢性甲状腺炎)の診断に使われますが、バセドウ病でもよくみられます。 | <16 IU/ml |
MCPA※ (マイクロゾームテスト) |
<100 x |
※これらの抗体は自己免疫反応を表していますが、この値が高いほど病気が重いというわけではありません。
甲状腺関連蛋白質
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検査項目 (正式名) |
説明 | 正常値 (単位) |
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HTg (サイログロブリン) |
サイログロブリンは甲状腺ホルモンを作る場を提供し、また、その一部は甲状腺ホルモンを作る素材となります。血液中にも少し漏れ出ていて、それを測定しています。甲状腺が通常より刺激されていたり、甲状腺に炎症や結節があると濃度が高くなります。腫瘍マーカーとして、がんなどで甲状腺を全て取ったあとで、どこかにわずかな甲状腺組織が残っていないか、転移はないかを調べるのによく使います。しかし、良性の結節でも高くなることは少なくありません。 | <35 ng/ml |
超音波検査
甲状腺の大きさや内部の状態をみる検査です。甲状腺は体の表面に近いところにあるので、超音波で調べやすい臓器です。結節の有無やその性質、炎症が起きているかなどを調べる場合には、CT、MRIより適しています。がんとわかった後にその広がりを見る場合などにはCTやMRIを用います。血流が増加しているかどうかをみることで甲状腺の機能を推定できることもあります。
穿刺吸引細胞診
甲状腺の結節が良性か悪性かを判断するために、針を使って結節の細胞を少量採り、顕微鏡で評価します。
放射性ヨウ素、放射性テクネシウム摂取率
甲状腺シンチグラフィー
ヨウ素やテクネシウムが甲状腺に取り込まれることを利用した検査です。甲状腺がホルモンを過剰に産生しているかどうかをみたり、甲状腺ホルモンが過剰になっている場合に、甲状腺全体で過剰産生しているのか、結節など一部分で作っているのかをみたりするのに使われます。バセドウ病のアイソトープ治療に使う放射性ヨウ素の量を決めたり、がんで甲状腺を全部摘出した後に転移があるかを調べるためにも用いられます。