甲状腺は、「のどぼとけ」の少し下にある13~18グラムほどの小さくて平たい臓器です。正常な甲状腺は軟らかいので首を触ってみてもわかりません。
横断面で位置関係をみると、頸椎(頸部の骨)の前に食道があり、その前が気管で、甲状腺は気管の前面に張り付いています。ものを飲み込むと気管と一緒に上下します。
甲状腺では、食物に含まれるヨウ素(ヨード)を主原料にして甲状腺ホルモンを作っています。
甲状腺ホルモンの働き
- 代謝を促してからだに活力を与える。
- 3歳ごろまで脳の正常な発達に、また成長期にはからだや骨の発育に関わる。
- 多すぎてもからだの支障になる(バセドウ病の項参照)。
甲状腺の病気の特徴
- 女性に多く、ほとんどの病気は20代から40代がピークで、子どもや高齢者には少ない。
- 甲状腺が全体に大きくなるもの(腫大)としこり状のもの(結節、腫瘤ともいう)ができるものがある。
- ごく一部のものを除いて局所(首、のど)に圧迫感や違和感など甲状腺の腫れ以外の症状がでることはない。
- 甲状腺ホルモンに異常の起こらないものと過不足を生じるものがある。
- 甲状腺ホルモンに過不足があるものは、甲状腺が大きくなることが多い。
- しこり(結節、腫瘤ともいう)の場合は、甲状腺ホルモンに異常があることはごくまれ。
- 甲状腺が大きかったりしこりがあったりしても治療の必要がないことも多い。
大きくなった甲状腺や、甲状腺のなかにできた「しこり」を甲状腺腫(甲状腺のはれ)といいます
甲状腺はかなり大きくなっても、また「しこり」ができても、「のど(喉)」や「首」の圧迫感や違和感、のどの詰まる感じなどの原因にはなりません。
病気の種類
- 甲状腺の病気は、下記に分けることができます。
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- 甲状腺ホルモンが多すぎたり足りなくなるもの
- 甲状腺に「しこり」ができるもの
- 炎症が起きているもの
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甲状腺ホルモンの過剰または不足 | しこりができる | 炎症が起きている |
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甲状腺の病気は甲状腺ホルモンが多過ぎたり足りなくなったりするもの、がんや良性の腫瘍などかたまり状に腫れる(結節)もの、炎症を起こすものがあります。
原因となる病気が何であっても甲状腺ホルモンの過不足は同じような症状を呈します。
甲状腺ホルモンが過剰になるのは通常甲状腺の働きが活発になってホルモンをたくさん作る(機能亢進)ためですが、ホルモンの過剰産生はないのに血液中のホルモンが増えてしまうことがあります。炎症などによりホルモンが血液中に漏れ出たり、甲状腺ホルモンを過剰に摂ってしまった場合です。原因がなんであっても血液中の甲状腺ホルモンが過剰になるものをまとめて「甲状腺中毒症」と言います。甲状腺の働きが高まっていないものは、「甲状腺機能亢進症」とは言えませんが、そう呼ばれることがよくあります。甲状腺ホルモンの過剰産生があるのか、漏れ出ただけなのかによってその後の対応や治療法が異なりますので、両者を見極めることが大切です。
炎症を起こす病気の一部では当初甲状腺ホルモンが漏れ出てホルモン過剰となり、治る前に一時的にホルモンがうまく作れなくなる(機能低下)ものがあります。(橋本病、甲状腺の炎症の項参照)
一部の結節は甲状腺ホルモンを勝手に産生してホルモン過剰となります。
このように、炎症や結節によってホルモンが多すぎたり少なくなるなど、3つの分け方は重なり合っています。
甲状腺が必要以上のホルモンを産生したり、逆に産生が不十分でホルモンが不足する病気になると、甲状腺全体が大きくなりますが、大きさと甲状腺ホルモンの異常の程度とは必ずしも一致しません。まれに異常があっても大きくならないこともあります。また甲状腺が大きくなっていても、甲状腺の働きに異常がないものもあります。ただしあとで異常を生じることがあります。
男女比
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甲状腺の病気 | 男女比 |
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バセドウ病 | 1:4~5 |
橋本病 | 1:10 |
良性結節 | 1:10 |
甲状腺がん* | 1:7 |
悪性リンパ腫 | 1:4~5 |
*未分化がんは1:3
甲状腺の病気は先天性のものを除くと女性に多いという特徴があります。