バセドウ病の薬の副作用|甲状腺と病気の正しい情報ならチーム甲状腺

バセドウ病の薬の副作用

バセドウ病に使う薬の副作用について
(メルカゾール、チウラジール/プロパジール)

    • まれであるが重大な副作用として、無顆粒球症や重症肝障害があるため、薬開始後約3ヶ月間は2週間毎に血液検査で白血球(顆粒球)や肝機能を調べる。
    • 無顆粒球症や重症肝障害を認めた場合はすぐに薬を中止し、アイソトープ治療(放射性ヨウ素療法)か手術に変更する。
    • 軽い副作用の場合はもう一方の内服薬(メルカゾールからチウラジール/プロパジール、あるいは逆)に変更する場合もある。

    バセドウ病に使う薬(抗甲状腺薬)にはメルカゾール、チウラジール/プロパジールがあります。これは「商品名」で、皆さんに馴染みのある名前です。これらの「一般名」はメルカゾール=チアマゾール、チウラジール/プロパジール=プロピルチオウラシル、です。チウラジールとプロパジールは製造している製薬会社が異なるため商品名が違っていますが、同じ薬です。
    バセドウ病のこの2種類の薬は 1950〜1960年にアメリカで開発され、長い間使われてきましたので副作用もよくわかっています。副作用がおこるとすると、開始後3か月以内のことが多いので、「理解」して、きっちり「対処」しましょう。副作用と注意点は下記の通りです。これらにジェネリックはありませんが、もともと安いお薬です。

    なお薬をやめ、しばらくたってまた同じ薬を飲み始めた時も、副作用チェックが必要です。「以前飲んでいて副作用がなかったから今回も大丈夫」とは限りませんのでご注意ください。自己判断でやめてまた飲み始める、というのもやめてください。

重い副作用

  • 白血球(顆粒球)が減って細菌感染を起こす

    1000人に1人〜5人程度におこるとされています。白血球のうち細菌感染を防ぐために必要な「顆粒球」が極端に減るものです。これは「無顆粒球症(顆粒球数<500個/μl)」といい、最も気をつけなくてはならない副作用です。飲み始めて約3か月以内におこることが多いため、2週毎に採血で顆粒球の数を調べます。顆粒球数が減ってきて、1000個/μl以下になるようなら薬を中止することを考えます。しかし急に顆粒球が減る場合は、定期通院だけでは診断できません。38度前後かそれ以上の発熱があれば、一旦薬をやめて、顆粒球数の結果をその場で出せる病院をその日のうちに受診して下さい。咽頭痛があることも多く、通常の風邪や扁桃炎と症状では区別できません。
    薬または薬手帳を持って行くとよいでしょう。
    もし顆粒球数が減っていたら薬を中止し、入院治療になります。落ち着いたらアイソトープ治療(放射性ヨウ素療法)か手術を選択します。顆粒球数が減っていなければ薬を再開できます。
    3ヶ月以上たってから副作用が起こる可能性はかなり減りますが、高熱が出た時には病院でこれらの薬を服用していることを必ず伝えて下さい。

  • 肝機能障害

    100人に3〜6人程度にみられ、ごく軽度のものも含めるともう少し頻度は高いとされます。ただし重症なものはその10分の1以下です。飲み始めて約3か月以内は2週間毎に採血で肝機能を検査します。大抵はこの検査で早期診断できますが、もし極端にだるい、白目が黄色い、尿が茶褐色になるなどの自覚症状が出たら服用後3ヶ月以降でも薬をやめて早く受診してください。
    チウラジール/プロパジールの方が、メルカゾールより重症な肝障害の率が高いとされています。肝障害を認めた場合はもう一方の薬(メルカゾールからチウラジール/プロパジール、あるいは逆)に変更せず、アイソトープ治療(放射性ヨウ素療法)か手術を選択します。
    甲状腺ホルモンの過剰も肝機能障害の原因になり、30%程度の人で異常値を認めますが、この場合はホルモン値の改善とともに良くなります。副作用かどうかを区別するために、薬開始前に肝機能を検査しておくことが必要です。

  • 特殊な抗体(MPO-ANCA)に関連した血管炎

    これは、服用期間に関わらずおこりうる、特殊で非常にまれな副作用です。チウラジール/プロパジールの方がメルカゾールより頻度が多いとされます。腎臓や肺、その他いろいろな臓器が影響を受け、入院が必要になります。血尿や血痰、関節痛等がでたら医師に伝えてください。チウラジール/プロパジールを服用している場合は診察時に検尿で潜血がないか調べます。抗体(MPO-ANCA)が陽性になっても血管炎を発症しているとは限りませんが、主治医と相談が必要です。

その他の副作用

  • 皮膚の症状

    かゆみのある発疹が出ることがあります。軽いものも含めると10%以上に起こるともいわれ、薬を開始して2週間前後に多い副作用です。軽い場合は抗アレルギー薬を内服しながら、甲状腺の薬を継続できる場合も多くあります。症状が強い場合は一時期ヨウ素に変更して症状が落ち着いてから、もう一方の薬(メルカゾール⇄チウラジール/プロパジール)に変更することもあります。皮膚症状が非常に重い時や、もう一方の薬に変更してもやはり副作用が出た場合はアイソトープ治療(放射性ヨウ素療法)か手術を選択します。

  • 関節痛

    多発性の関節炎がおこることがあります。頻度は多くありませんが、100人に1人くらいと言う外国の報告はあります。症状があれば主治医を受診して中止するか相談しましょう。

  • 筋肉のつり

    体の向きを変えた瞬間に筋肉がつったり痛くなることがあります。急に抗甲状腺薬が効いてきたときにおこることが多く、症状が強いようでしたら早めに受診して下さい。

  • その他

    薬を開始後に「太った」という方がいます。これは副作用でなく、機能亢進が良くなって消費するカロリーが減ったためです。
    脱毛や胃腸障害はまれで、大抵は他の原因からきています。

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