バセドウ病眼症(甲状腺眼症)|甲状腺と病気の正しい情報ならチーム甲状腺

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)

  • 適切な時期に適切な対応を

    • 目にはっきりとした症状があることは少ない
    • 炎症が盛んに起きている(活動性)のを見極めて早く治療を
    • 症状が進んでも治療で日常生活に支障のない程度まで回復可能
    • 禁煙は大切

    バセドウ病というとよく‵目が飛び出る病気′と思われていますが、目に明らかな異常が起こるのは一部の方です。詳しい検査をすると、ごく軽いものも含めるとバセドウ病の7割ほどに眼に異常があるとされていますが、症状がでるのは少ないのです。ただ目は顔の印象を形成する重要な要素で、それまでと少しでも違うと気になりますし、大きく変わると気持ちが落ち込むだけでなく仕事や周囲との関係にも影響を与えかねません。外見はほとんど変わらなくても痛みや違和感、まれには複視と言ってものが二重に見えることなどがあると日常生活にも不具合が生じます。しかしこのような場合も早いうちに診断して適切に治療すれば悪化を防ぎ改善することが期待できます。
    バセドウ病の目の異常はおもにバセドウ病にみられる特有なものなのでバセドウ病眼症と言います。甲状腺眼症ということもあります。ここではまずバセドウ病眼症とはどんなものなのかを説明し、はっきりとした異常があってもどのようにしたら自覚症状がなくなって、見た目も気にならないように出来るかについて解説します。

バセドウ病眼症はどのような病気か

  • バセドウ病は免疫という反応によって、甲状腺ホルモンの分泌を調節している甲状腺刺激ホルモン(TSH)の受け手(受容体)に対する抗体(TSH受容体抗体)が出来て甲状腺を刺激しつづけるので、甲状腺ホルモンが過剰になってしまう病気です。

    目の周りの組織にもTSH受容体など甲状腺と共通のものがありますが、目が出る、まぶたが腫れるなどいろいろな障害が起こるのは目を取り巻く組織に免疫反応によって炎症が起こるためです。大抵は甲状腺機能亢進症と同時期に起こりますが、目の症状が先に起きしばらくしてから甲状腺機能亢進症となることもあります。あとから目の症状が起こることはまれです。必ずしも機能亢進症がひどいほど目の症状も強いということはなく、目の症状が強いのに甲状腺ホルモンの過剰は軽いことも少なくありません。甲状腺機能亢進症がないまま目だけに症状がつづくこともあり、これもバセドウ病と診断します。

症状活動性を見極めることが大切-

  • 自覚する症状

    外観でわかるのは、上まぶたが吊りあがる(上眼瞼後退)、まぶたが腫れる(眼瞼腫脹)、目が出る(眼球突出)という症状です。このほか目の奥の痛みやまぶたが十分に閉じないため結膜が充血したり乾燥する、ものが二重に見える(複視)、などがあります。

  • 症状が起こるメカニズム

    眼球の入っている眼窩という頭蓋骨の空洞の中では、眼球を動かす筋肉や脂肪組織などが眼球の周囲を囲っています。これらに炎症が起こって筋肉が肥大したり脂肪が増えたりして眼窩内の圧が高まると、眼球が前に押し出されることになります(眼球突出)。まぶたの腫れ(眼瞼腫脹)も炎症が起こったり脂肪がたまったりするためです。涙腺に炎症が起こると涙が出たりします。炎症とは別に甲状腺ホルモンが多すぎるなどによって交感神経が緊張すると上まぶたが吊りあがることがあります(上眼瞼後退)。この場合には目が大きくなって出ているように見えたりしますが、眼球突出とは違います。

  • 炎症の活動期と治療のタイミング

    炎症が盛んに起きている時期(活動期)は数か月で終わり、徐々に鎮静化して安定する時期が長く続きます。一見明らかな症状があっても活動期とは限りません。炎症が抑まっても目が出ているのは残りますし、ダブって見えるという場合も活動期は過ぎている場合が少なくありません。
    治療するうえで重要なのは炎症が活発に起きているとき(活動期)の症状です。目の奥のいたみ、目を動かしたときの痛み、まぶたが腫れる、まぶたが赤くなる、結膜の充血、結膜の浮腫、涙腺の腫れで、このうち3つ以上あると活動性があると判断し炎症を抑える治療をします。特に大切なのは視力が低下し、ものがぼやけて見える場合です。眼球の周囲の組織、特に筋肉が急激に腫れたために視神経が圧迫されると出てくる症状で、速やかに治療しないと視力が回復しないことになりかねない視神経炎という緊急事態です。特に中年以降の男性喫煙者は要注意です。
    活動性の炎症がなくても高度な上眼瞼後退や眼球突出、複視など日常生活に支障をきたすような障害を生じている場合は積極的な治療の対象となります。

MRIによる評価

  • 目の奥や瞼の状態を知るのにMRI検査が行われます。目を動かす筋肉の腫れの程度やそのほかの組織がどのくらい増えているかがわかるだけでなく、活動性の炎症があるかどうかを見ることが出来ます。活動性を示す症状があるときは出来るだけ早く検査を受けることが大切です。

発症の促進・悪化の要因-禁煙を-

  • 生活上の悪化要因として喫煙、ストレスなどが知られています。このうち喫煙は自分の意志でやめることが出来るので禁煙を強くお勧めします。ただ無理に禁煙しようとするとかえってストレスとなって甲状腺機能亢進症を悪化させ、さらには眼症にも悪影響を与えかねませんので、禁煙がストレスになるようなら甲状腺機能が落ち着くまで待ってから禁煙するようにします。甲状腺機能亢進症が悪化するときは甲状腺に対する免疫反応が強くなりますが、目に対する免疫反応も盛んになる可能性があります。甲状腺の治療をおろそかにして悪化しないようにしましょう。一方薬の効き過ぎで甲状腺機能低下症になるのも甲状腺刺激ホルモン(TSH)が増え目によくありません。また放射性ヨウ素によるバセドウ病の治療で眼症が悪化することがあります。この治療を受けるときは内科主治医や眼科医とよく相談しましょう。

治療

  • まず甲状腺機能亢進症を抑える治療が大切です。お薬で甲状腺機能亢進症が治まってくるとたいていは免疫反応も抑まってきて眼症にも良い影響をもたらします。放射性ヨウ素による治療は眼症を悪化させることがあるので、治療しても大丈夫かを検討してから行います。

    活動期の治療

    炎症を抑える治療をします。炎症が強いときは副腎皮質ステロイド薬を点滴で静脈注射します。この薬には肝障害、糖尿病、胃潰瘍、感染しやすいなどの副作用がありますので入院して行います。通常3日間連続/週を3回行い、以後内服に切り替えます。B型ウイルス性肝炎に罹っている方、その既往のある方、キャリアーの方は、ウイルスが活性化される危険があり、対応が必要です。糖尿病は悪化して、しばしば一時的にインスリン治療が必要になります。ステロイド治療に加えて炎症で腫れている部位に外から放射線治療を行うとより効果が上がることが多く、重症の時に勧められます。なお放射線治療は糖尿病や高血圧で網膜症のある方では悪化の危険性がありますので行いません。炎症が軽い場合には経過を見ることになりますが、ステロイド薬の内服で治療することもあります。また、腫れが眼瞼だけに留まる場合には、直接ステロイドを注射すると炎症が抑えられることが期待されます。炎症が治まっても症状が残るときは、回復する手段があります。吊りあがったまぶた(上眼瞼後退)は甲状腺機能が正常になると治まることが少なくありませんが、残っている場合は交感神経を抑える点眼薬で治療し、それでも十分な改善が見られないときにはボツリヌス毒素の注射や手術をすることもあります。

  • 非活動期の治療

    外見や機能の回復の治療をします。まぶたに脂肪がたまって腫れているときは手術で取り除くことができます。ものがダブって見えるとき(複視)は目を動かす筋肉を調整する手術で改善します。眼球突出のため角膜や結膜に重い症状があるときや、眼窩内の圧力が高まって視神経を圧迫し視力障害の後遺症が心配されるときには、眼窩の骨を削って圧力を低下させ、目をひっこめる手術(眼窩減圧術)を行います。これら眼科の治療はこの病気に慣れた医師の診療を必要としますのでバセドウ病を診ている主治医から紹介してもらいます。

    このように炎症を抑え機能回復を図ることでそれほど目立たないようになり、この病気のことをほとんど気にしなくて過ごせるようになっていただければと思います。

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