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甲状腺とヨウ素

  • 海藻に多く含まれるヨウ素は、甲状腺ホルモンの主要な材料。
  • 日本人は通常甲状腺ホルモン産生に必要な量以上のヨウ素を摂取している。
  • 大量のヨウ素を摂取し続けるとその間甲状腺機能低下症になる人がいるが、やめれば回復する。
  • バセドウ病にヨウ素(海藻)の制限はいらない

ヨウ素は甲状腺ホルモンを作る材料

ヨウ素はヨードともいい、海産物に多く含まれている元素のひとつです。甲状腺はヨウ素を必要としているただ一つの臓器で、これを材料として甲状腺ホルモンを作っています。
甲状腺ホルモンを作るために必要なヨウ素の量は、大人で1日わずか150マイクログラム(μg)、すなわち0.15ミリグラム(mg)です。妊娠すると必要量が増えて1日200~250μg(0.2〜0.25 mg)、授乳中は1日250〜290μg(0.25〜0.29 mg)です。

世界にはヨウ素不足の人が多い

人口70億と言われる世界の中で、16億人ほどの人がヨウ素不足の状態にあります。そのため甲状腺ホルモンが十分作れず、甲状腺機能低下症になりがちです。これは海産物を食べる習慣がないことが原因です。この問題を解消するため、食塩にヨウ素を加えるなどしていますが、先進国でもなかなか徹底しないのが現状です。

日本人はヨウ素を必要以上に摂っていることが多い

日本人が口にするものの中には、多かれ少なかれヨウ素が含まれています。特に多く含まれているのは海藻類で、なかでも「昆布」が群を抜いています昆布は「出汁(だし)」として醤油、味噌、酢はもちろん、清涼飲料水にまで添加されていることがあります。1回の食事で食べる量でみると、昆布はひじきの10倍、海苔の100倍です。海藻以外に海洋魚や穀類などにも含まれています。

食品から摂取されるヨウ素量

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食品 ヨード量/100g 1食に摂取する量
おおよその量(g)
ヨウ素含量
昆布 200mg 5 10〜20mg
昆布出し汁 昆布0.5〜1.0 1〜2mg
ひじき 30mg 5〜7 1.5〜2mg
わかめ 10mg 1〜2 0.8〜1.5mg
海苔 6〜7mg 2 120μg
寒天 2mg 10 200μg
いわし 300μg 100 300μg
ぶり 200μg 100 200μg
塩さけ 150μg 100 150μg
大豆 100μg 20 20μg
白米 40μg 160 64μg

文献:布施養善ほか 日本人のヨウ素摂取量推定のための加工食品類の
ヨウ素含有量について 日本臨床栄養学会 32 (1):26-27, 2010

日本人は知らず知らずのうちに必要量以上のヨウ素摂取している世界でもまれな国民です。ヨウ素が多すぎるからといって、甲状腺ホルモンが過剰に作られるということはありません。甲状腺にはそうならない仕組みがあるからです。

大量のヨウ素で甲状腺機能低下症になる人がいる

不思議なことに、大量のヨウ素を取り続けると逆に甲状腺ホルモンの産生が減って、甲状腺機能低下症になる人がいます。橋本病の人に多い傾向があり、高度の低下症になることはまれですが、軽い低下症になることはよくあります。
甲状腺機能低下症になるほど大量のヨウ素を含むものは「昆布」です。ただし続けて摂取することをやめれば間もなく元に戻ります。
例を挙げますと、甲状腺機能低下症の症状があって受診した人に念のため聞いたところ、奥さんが作った昆布水を、体に良いからと毎日飲んでいたそうです。昆布に含まれる大部分のヨウ素は、水に浸すと短時間のうちに溶け出だします。昆布水を止めて2週間後に調べたら甲状腺機能は正常になっていました。
大量のヨウ素で甲状腺が影響を受けるか受けないかは予測ができないので、昆布を毎日食べたいのであれば、食べ続けてみて甲状腺機能を調べてみればよいのです。

大量のヨウ素を含む食品以外のもの

大量のヨウ素を含んでいる食品以外のものに、不妊の検査などで行う卵管造影の時に使われる油性の造影剤(リピオドール)があります。長い人では検査を受けてから半年ぐらい甲状腺の働きに影響する場合があります。この造影剤を使う前に甲状腺機能を調べておき、検査してから1か月ごとに甲状腺機能を調べて、甲状腺機能低下症と分かった場合は、回復するまで甲状腺ホルモンを服用すれば問題ありません。このほか、うがい薬に大量のヨウ素を含んでいるものがありますが、これで1日に何度も毎日のようにうがいする、というようなことをしなければ影響はありません。

海藻に対する誤解

「甲状腺の病気の人は海藻を一切食べてはいけない」という誤った情報があります。そのためおにぎりの海苔も避けていたという人がいました。昆布以外の海藻は、よほど大量に食べ続けなければ甲状腺機能低下症を生じません。海藻を一切食べない食生活はどれだけ貧しいものだったでしょう!

ヨウ素はバセドウ病の治療に使うこともある

バセドウ病は甲状腺ホルモンの産生が過剰になる病気です。通常抗甲状腺薬を使ってこれを減らすという治療をします。ヨウ素にもこれと同じ作用があるので、治療に使うことがあります。
抗甲状腺薬で治療すると副作用が起こることがありますが、ヨウ素にはそれがありません。効果が不十分なことや、効き目が落ちるたりすることがありますが、これが合う患者さんには長く使えます。また抗甲状腺薬と一緒に使うこともあります。(バセドウ病の治療参照

放射性ヨウ素を使う検査・治療時には摂取制限が必要

放射性ヨウ素を使う検査や治療時にヨウ素がたくさんあると邪魔をしてしまいますので1週間ほど前から検査・治療の後までヨウ素摂取制限をします。

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